2017/03/08

花の咲く場所まで走ろう

駆け出す人たちを見送る
そのうしろ姿を
しばし見送る
後れて走り出す
立ち止まってしまいたいのを
こらえて走る

かけっこは苦手
競うのは苦手
ひとりで走りたい
だから
うしろで見送る

追い抜かれるのは怖い
ぶつかるのは怖い
かけっこになると途端に
どんなおそい子にも負けるわたしの
走るフォームを褒めてくれた父は
もういない

かけっこが嫌いだった
競うのが嫌いだった
でも
ひとりだけ取り残されるのも
ほんとうは怖かった

わたしのかわりに
運動会ではかならず
父が一等賞を取ってくれた
前傾姿勢で走り出す父
少年のようだった
その父は
もういない

スタートダッシュもフォームも
父が教えてくれた
自転車もスキーも
父が教えてくれた
それなのに臆病で
なんにもできなかった
自転車だけは大好きだったけど
眼を悪くして父の心配の種になって
それから
わたしはひたすら歩いた

おまえはやればなんでもできるんだ
怖いことはなにもないんだ
そう言った父の顔
まだ少年のような眼差し

誰かと走りたい
あなたと走りたい
みんなで走りたい
あのむかし
ふざけて原っぱを走りまわったみたいに
追いかけていきたい
どこまでも
どこまでも
息がつづくまで

限界まで走って倒れこんだら
草の匂いがするだろう
空はどこまでも青いだろう
雲はぐんぐん動くだろう
そう
あのときのように

走るのは苦手
競うのは苦手
追い抜くためには走れない
追いかけるために走るんだ
駆け出すあなたを
追いかけるために走るんだ

あなたのいるところを目指して
走ろう
花を愛するあなたのいるところ
きっとすぐにわかるだろう
ここから走り出そう
限界まで走ろう
息がつづくまで走ろう

あなたがいる
花の咲く場所まで走ろう
そうして
草いきれのなかに倒れて
ゆっくりと眠ろう
そのときまで走ろう



父の待ちこがれた春が来て


日差しがでてきて、日中の陽気がよくなって、近くの家々の庭先に花が咲き始めた。
眺めながら歩くのが大好きだったけれど、両親が相次いで倒れ
父が他界してからは、花を見るたび切ない思いがする。
父が育てていた花々は、姉が頼んで山に運んでもらい植えてもらったという。
山に植えられ、たっぷりの日が当たっている梅の木の写真を送ってもらった。
今頃はいつものように、丹精するためにあれこれ眺めているのに違いない。

運動が得意で、走るのが速かった父。
学生時代は野球をしていて、キュッチャーだった。
父と最後に見たテレビ番組も、野球中継。
疎いわたしにわかるように、父の解説つきで、二人で最後まで見終わった時
来年は見れないだろうというようなことを言って、笑ってみせた。
いつもの、首をすくめながらの、満面の笑み。

父に体型や体質が似ていたわたし。
お前が運動音痴のはずがない、といつも言ってくれた。
勇気を出してやればなんでもできるんだ、と言って励ましてくれた。
負けるが勝ちの性分は治らず、結局わたしは何一つうまくできなかった。
頑固な父の性格が、少しはわたしにもあるならば、わたしの場合は裏目にでたらしい。
今になって、あんなにかたくなに運動を拒否してしまった理由も、もうわからない。

人と競争することは、とにかく苦手だった。
姉と比べられるところから、そうなったかもしれない。
母の洗脳もあった。
お前は自分に似て運動は駄目、という。
父が運動会で他のどの子のお父さんよりも速いのも、実はつらいものもあったのだ。
お父さんは速いんだから頑張れ、と言われつづけていたから。

家族はみんな頑張り屋さんで、家での会話には
「根性」とか「絶対」とか「必ず」が飛び交っていた。最後まで、そうだった。
わたしだけが駄目な頑張れない性分に甘えていた。今でもそうだ。
それでも父は、お前はやればできる、と言いつづけてくれた。
今でもまだ、そう言って励ましているだろうから
天国の父のところに行くのには、走って行こうと思う。
あんなに走るのも運動も得意だった、かっこいい父にもどって
いっぱい体を動かしているんだろう。

春、今年の花はどうですか?
体を鍛えて、いつか走って行くからね。
みんなを見守ってね。






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